いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

金曜ロードショー「酷いテロップ」騒動にみるリニア/ノンリニアの境界

シャーロック・ホームズ』が放映された先週の日テレ「金曜ロードショー」が、一部で話題になっていた。
映画「シャーロックホームズ」で左上に表示されるテロップに苦情殺到 #ntv #シャーロックホームズ - NAVER まとめ

こういうのが常時入っていたらしい。


これについて何か書こうかと思っていたが、すでに書かれていた。
地上波映画放送にアホみたいなテロップが付く3つの理由


基本的に同意だが、この記事に二三付け足すならば、映像の文法という観点もある。
かつて『スター・ウォーズ』のテレビ放映時に、デス・スターの外観が映った次のカットで「デス・スターの内部」というテロップが入った、という本当か噓かわからない話があるが、これはあながち間違っているとも言えない。というのも、建物の外観が映ったあとの屋内のカットが先の建物の中だ、という暗黙の了解は鑑賞者が後天的に獲得する文法であり、それは「あたりまえ」ではない。
「近頃の子どもはマンガが読めない説」が物語るように、視覚芸術にも学ばなければならない固有の「文法」がある。特に、テレビドラマとちがって「ながら視聴」を前提としていない映画は、この文法を鑑賞者側がわかった前提で作られることが多い。できるだけ多くの視聴者を獲得したいならば、文法に疎い人を想定して映像を「咀嚼」するのは間違った発想ではない。
また、洋画に限定した話だが、外国人の顔の見分けがつかないという人も一定層いる。観測範囲でも何人か知っている。そう言う人のために、登場人物紹介の文字を入れるのも理解はできる。なんなら、再登場するたびに入れたっていいと思う。


ところで、この騒動について考えていると、以前紹介した“メディア野郎”田端信太郎氏が著書『MEDIA MAKERS』で主張した、コンテンツの「リニア/ノンリニア」という分類を思い出した。

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体


生憎いま手元にないのだが、こちらの記事がダイジェスト版として有効だと思う。

映画監督はなぜ「偉い」と思われるのか?リニアにコンテンツを見てもらえることは今や凄い特権だ―源氏物語からニコ動まで。コンテンツを分類する3次元マトリックス(3) | AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議


この記事に即していえば、「リニア」なコンテンツとは「頭から最後まで見てもらうことを想定した」もの、「ノンリニア」なコンテンツとは「順不同で断片的に見てもらうことを想定した」ものとなる。
記事中の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の例が印象的だが、「映画館で鑑賞する映画」というのはリニアなコンテンツであることがよくわかる。
そしてこれも記事で指摘されているが、秒単位で移り気する受容者が多い現代は、「リニアなコンテンツ」よりも「ノンリニアなコンテンツ」の方が親和性が高い。
実はここに、テレビ(狭義の「視聴率」として意味のあるリアルタイム視聴)の窮状があると思う。劇場映画のように巻き戻しや早送り、一時停止ができない「リニア」なメディアなはずなのに、劇場映画とちがってスマホやネットといった「ノンリニア」なコンテンツとの競争を強いられているのだから。

印象ではテレビ番組のテロップは以前にも増してうるさくなっているが、それは「どこからでも視聴参加できる」というとっかかりをより多くつくることで、巻き戻しはできないまでも途中から参加できるようにした「亜ノンリニア化」の傾向の一つなのだととらえられる。
今回の「酷いテロップ」騒動はつまり、「リニア」な映画というコンテンツが現代のテレビの兆候にしたがって「亜ノンリニア化」された結果、だともいえる。どこからでもなんとなく観れる、それを目指したのが今回の「酷いテロップ」なのだ。


今後も「ノンリニア」なコンテンツ、受容スタイル優勢の傾向は変わりそうになく、テレビ番組としての映画に希望が見いだせないのだが、1つだけ対処法はある。ヒントは『天空の城 ラピュタ』での「バルス」祭りだ。
テレビのリアルタイム視聴が、Twitterなどのソーシャル上での「イベント化」を遂げられれば、それは一転して「リニア」なコンテンツとして受容するからこそ意味があるコンテンツになる。
作中のある場面にたどり着くまでを、たとえば「×××まであと◯◯分」というあの悪名高いテロップのカウントダウン方式で知らせればいい。ただしこれには制約があり、なによりも「誰もが知ってるおなじみの映画の中の印象的な場面・セリフ」があることが必須で、その点で選ばれる映画は限られてくるだろうが。

例をあげれば……
セーラー服と機関銃』→「『快感』まであと◯◯分」
ターミネーター2』→「壮絶!!親指立てて溶鉱炉まであと◯◯分」
ダークナイト』→「恐怖!!ジョーカーさんによる鉛筆マジックまであと◯◯分」
アベンジャーズ』→「ハルクさん、ソー誤爆まで◯◯分」
バイオハザード』→「恐怖の人間ところてんまであと◯◯分」


こんな感じだろうか。ますますネットで叩かれるだろうが、試してみる価値はあるだろう。