いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ヘルタースケルター 40点

沢尻エリカがヌードになったことで話題になった、岡崎京子原作の蜷川実花監督作品『ヘルタースケルター』を、ようやく観た。
虚飾にまみれた芸能界で、美容整形によって美を手に入れたヒロイン・りりこの栄光と墜落を描いている。
ぼくからすれば、香山リカではないが原作は「90年代がいっぱい」という印象で、それと切り離して2010年代に再現することの意義は見いだせないが、その空白に代わりに引っ張ってきたのが蜷川のガーリーな色彩感覚だとしたら、それはわりと合っていたように思えるのだが……。


最大の問題は、キザな検事役の大森南朋が合間合間で「言いたいこと」を全部話しちゃうことで、耽美的な雰囲気の作品に見えるが、本質はむちゃくちゃ野暮である。

原作でもたしかにああいうキャラだった記憶はあるが、大森のもっさりとしたビジュアルとボソボソした喋り方で再現されると、「アリアドネの糸」とか言うたびに後ろからスリッパで頭をはたきたくなる。さらに、こいつが狂言回しのような立場だから、よけいそのウザさが際立つ。鈴木杏とのコンビ芸は『さよなら渓谷』でも見せているが、そちらの方がはるかによい。本作は完全に大森南朋の無駄遣い。
ネットで調べると大森についてはみんな触れているが、彼以外にも本作では、本来は盤石に思える脇役の俳優たちが、一人頑張っている沢尻の足を引っ張っているように思えるのだ。
桃井かおり原田美枝子はなんだがぎこちないし、ほんの少ししか映っていない哀川翔もすごくて、沢尻の上で腰を振りながら甲高い奇声をあげている姿は、まるで動物をあやすムツゴロウさんである。寺島進にいたっては目が死んでおり、セリフはぶっきらぼうを通り越して棒読みだ。
このようにベテラン俳優たちほど浮いてしまうのは、彼らが悪いというより、耽美な世界観以外のリアリズムを作り出せない作り手側の限界のような気がする。

展開も不恰好で、最初の約20分で人気絶頂の時代から手術の副作用が出始めるところまで進めたあと、寺島しのぶ新井浩文による証言を挟む。こうした型式は、本編が現在進行形では過去形である、というサインとしてよく用いられるが、この映画はそのあともう一回人気絶頂期のりりこについて語るのである。これが非常にダルい。
りりこの地位が失墜していく過程にもメリハリがなくて、美知子にその座を奪われたのか、彼女がただ単に自滅したのかがわかりにくい
また、美容整形が重要なファクターのはずなのに、ビフォアーをみせないのも変な話である。


観終わったあとに沢尻の尻を観たというゴミのようなダジャレが頭に浮かんだが、ほんとそれが唯一にちかい見どころである。