いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 60点


モナコ大公レーニエ3世に嫁いだ女優グレース・ケリー。本作『グレース・オブ・モナコ』は、モナコを1962年に襲ったフランス領化危機で打った、彼女の一世一代の大芝居を描いている。

ニコール・キッドマンで再現し、実物に比肩するのがやっとという実在の人物も早々いないだろう。ケリー、キッドマンともに美女として完成されすぎて、反面(たとえばスカーレット・ヨハンソンのような)セクシーさに欠けているという点で、このキャスティングは当たっていると思う。

物語の口火を切るのは、世紀の大監督ヒッチコックだ。彼が、大公妃としての暮らしに馴染めずにいたグレースに新作映画の台本をもってきたことから、彼女の中で業界への未練が再燃する。
このあたり、バリキャリOLが皇太子に見初められて皇室内で苦労するという、どこかの国のお話をなぞるかのようだが、民間から花嫁を向かい入れる時代には、どこの国でもままあることなのかもしれない。


そんな中、おんぶにだっこ状態だったフランスが金を払えとブチギレたことで、モナコに国家存亡の危機が訪れる。
女優グレース・ケリーモナコ大公妃の間で揺らいでいた彼女に、ある人物が示唆的な発言を投げかける――グレース・ケリーを演じる時代は終わり、いまあなたはモナコ大公妃を演じているのだ、と。言い換えればそれは、今も昔もあなたは(拡大解釈すれば女性は)"女優"であり、その本質に変わりはない、というのだ。

そこから奮起したグレースは、大公妃としての特訓が始まる。その一方で、モナコ側に実はフランスの内通者がいる、という疑いも浮上。このあたり、いかにも冷戦時代というスパイものの要素もあり、そこそこ楽しめる。


ただ、全体的には予告編をなぞるような感じ。
それはしかたないにしても、クライマックスでの大演説にあまり心惹かれなかった。海外の政治家の伝記映画などでの演説シーンはグッと来るものがあるのだけど、本作に関しては論理もよくわからないし、大事な場面なのに異常に寄りの画が気になってしょうがなかった。