いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】喰女 ―クイメ―

いまやすっかりブログ芸人になった市川海老蔵と、柴咲コウ共演のホラー映画(?)。
女優の後藤美雪(柴咲)は、主演舞台「真四谷怪談」で恋人で俳優の長谷川浩介(海老蔵)と共演する。好いた男に捨てられた女の恨みを描いた「四谷怪談」だが、その稽古の最中、虚構の世界のみならず舞台の外でも浮気性の浩介は、後藤に隠れて共演女優らを抱いていたのだ……。


本業の歌舞伎の方ですでに演じたそうだが、海老蔵伊右衛門をやるというのは、たぶん「そういう人」だと思われているのを自覚しているんだろう。現実では小岩のような女でなく、屈強な関●連合の男たちにボコられたわけだが、プレイボーイがすごく板につく存在感。
よく「女を喰う」と表現するが、もし「男を喰う」という表現があるとしたら、男のプレイボーイのようなからっからとしてのでなく、この映画のように一度食いついたら話さない、カニばさみするような執着をいうのだと思う。「喰女」という字面には、そんなインスピレーションがわいてくる。

小岩に子どもを産ませながら、別の女に目移りする伊右衛門と同じように、浩介も美雪を裏切り、不貞を働く。それに気づいている美雪は、精神を病んでいった先でとんでもない凶行に及ぶ。
正直に言おう。感情的にピークはここである。映画は全編、そこまで怖くはないのだが、このシーンで「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」となるのは必至。これぞ三池節というか、ただの食器の煮沸消毒なのに、ソワソワさせられる。

壊れた美雪と対峙することになる浩介に何が待っているのか。三池崇監督による「四谷怪談リメイク」といえる本作は、やはりというか、待ってましたというか、そこにもうひと捻りが加えられている。


劇中劇の舞台パートも力が入っていて、俳優陣もみなそれぞれ色を持っている。とくに伊藤英明は、また危険なキノコをキメてるんじゃないかというくらい、まさに怪演というインパクトで、ハスミンからはエラいギャップだ。

ただ、この映画に欠点があるとすれば、それは柴咲コウ、というより、彼女をキャスティングした側にあると思う。彼女自身はものすごく頑張っていたのだが、そもそもこの役は柴咲さん向きでないんじゃね? と思うのだ。彼女がやるには真が弱すぎるというか、逆に言えば彼女の佇まいに病みそうな気配がないということなのだ。彼女ならきっと、病んだりせずこんなクソ野郎はさっさと捨てるだろ、と思ってしまう。ぶっちゃけた話、小岩はメンへラだし、美雪もメンヘラなのだ。けれど、柴咲にはそうした弱い役がどうも似合わないように感じる。