いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【映画評】ヒントは剃毛!? ジェームズ・マカヴォイ×ダニー・ボイルのクライムサスペンス「トランス」


絵画のオークションが強盗団に襲撃された。彼らの獲物は、いままさに2750万ポンドで落札されたゴヤの『魔女の飛翔』。競売人のサイモン(ジェームズ・マカヴォイ)は、緊急時のマニュアルどおり絵画を抱えて避難しようとしたが、待ち伏せていた強盗団のボス・フランク(ヴァンサン・カッセル)に殴られて意識を失う。まんまと獲物を手に入れたと思われた強盗団だが、額縁の中は空。意識を取り戻したサイモンは彼らの追及に遭うが、絵画の在処はどうしても思い出せない。フランクは頼みの綱として、サイモンの深層心理をこじ開けるべく、催眠療法師のエリザベスを訪ねさせるのだが……。


X-MEN』シリーズ、『声をかくす人』などで今をときめくマカヴォイと『トレンスポッティング』『127時間』のダニー・ボイル監督がタックを組んだクライムサスペンス。

映画は冒頭、レンブラントの作品『ガリラヤの海の嵐』を紹介する。この作品は劇中での『魔女の飛翔』と盗難に遭ったという共通点からここで持ち出されるが、それ以上にここで紹介されたのにワケがあると思われる。この「絵画の作者自身が嵐に翻弄される船に乗っている」(=作者本人が不安定)という構図そのものが、この映画を言い表している。そう、つまり、冒頭で理知的に語り始める主人公サイモンは、実は「信頼できない語り手」なのだ。
本作は例えば『ユージュアル・サスペクツ』のような「2度目の鑑賞で腑に落ちる」タイプの映画に数えられるだろう。不可解なカットの謎は後々氷解していくが、無論全てのカットを覚えきれてはおらず、全部観終わったあとに2倍速なんかで観なおしてみると「あーなるほど」となる、そういう映画だ。
「あーなるほど」が醍醐味のため、何を書いてもネタバレになりそうでやりづらいが、「強盗から絵を守ろうとした競売人」であったはずのサイモンは、肝心の絵の在処に近づくにつれ、徐々に自身の真の姿を知ることとなる。今から男女の営みをおっぱじめようって時に、女が大事な部分のおけけを剃ってきたのを見て「なんでこいつ俺の好みを知ってんだ!?」と真相に気づき始めるところなどかなり笑える。全編にわたり、ダニー・ボイルのオサレな色彩感覚は相変わらずで視覚的にも楽しい。
ただ、不可解だったのはクライマックスで、結構深刻な事態になり、サイモンなんて悲惨なことになっているのだが、にもかかわらず超ポジティブな印象を残すのだ。「え? こんな終わり方でいいの?」という気がするが、オサレな色調とBGMで煙に巻かれた感がある。
ただ、ヴァンサン・カッセルファンとしては、彼が思いのほかフューチャーされていたのでよしとする。