いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【悲報】全国ネットで「小さい女の子と成人男性という組み合わせは犯罪を疑え」と呼びかけられる事案が発生

倉敷市で起きた小学5年の女子児童が行方不明になっていた事件で、19日に児童は無事保護され、男が逮捕された。
胸をなで下ろす結果となったが、このニュースに関してテレビ番組で「だめんず・うぉ〜か〜」でお馴染みの自称漫画家・倉田真由美(通称くらたま)が、つぎのような主張をしていたらしい。

漫画家の倉田真由美氏が20日放送の情報番組「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ系)に出演し、小さい女の子と成人男性の組み合わせを見かけたら「注視し、時には声かけをするべき」と発言した。
(中略)
倉田氏は「時には声かけをする、『もしもしどうかしましたか?』って。お父さんだということだったら、『失礼しました』っていうだけの話ですから」とし、「私たちは機械とは違って選別できるじゃないですか。小さい女の子と成人男性という組み合わせは、ちょっと通り過ぎるだけじゃ済まないようにしましょう」と視聴者に呼びかけた。


漫画家・倉田真由美氏、倉敷の女児誘拐事件で「小さい女の子と成人男性の組み合わせには注視した方がいい」と発言 - ライブドアニュース


世の中の娘の父親の2人組は、とりあえず疑ってかかれ、と全国ネットで訴えているのである。
これを読み、多くのネット民の脳裏をよぎると思われるのが、事案発生系シリーズである。

男が歩いている事案が発生
12月23日18時30分頃、貝塚市久保377番地先路上で、女子中学生が帰宅中に,不審者を発見し,通報したもの。
20代過ぎ,中肉,黒色短髪,白色手袋,白色マスク,黒色セーター着用の男1名


女子学生の後ろを、男が同じ方向に歩いていたという事案が発生
12月7日午後10時頃、小倉北区赤坂3丁目付近で、帰宅中の女子学生の後ろを男が同じ方向に歩いていたという事案が発生しました。男は年齢60歳位、身長170センチ位、中肉、白髪で黒色のロングコートを着用していました。


【事件?】最近の「◯◯する事案が発生」まとめ【それとも・・・】 - NAVER まとめ

一体どこが事件なんだという些細な出来事が針小棒大に伝えられ、警戒すべき「事案」として報告される様が、ネットで定期的に取り上げられている。まさか、娘と過ごしている父親までもが警戒される時代が来ようとは。
ちなみに、くらたまは2009年に再婚し第二子となる長女を生んでいるが、彼女の主張を鵜呑みにするならば、彼女の夫と今年5歳になる長女が歩いているときも、声掛けの対象になるのだろう。念のためである。


センセーショナルな事件が起きるたび、治安への不安が取りざたされる傾向があるが、統計的にみれば治安は悪くなどなっていないし、さらにいえばそんな中でも、略取誘拐事件については発生件数、発生率がともに殺人や強姦、傷害、放火など、他の暴力事件よりも低いことが、火を見るよりも明らかだ(ちなみに、ウィキペディアの「日本の犯罪と治安」の項目は、1926年から2012年までが一覧として閲覧できるため、大変便利だ)。

おそらく、くらたまの言う試みをみなが実行したところで、その多くが取り越し苦労に終わる。
彼女はその場合、謝ればいいと言っているが、想像してみてもらいたい。せっかくの休日、父娘(兄妹の可能性だってある)水入らずで過ごしているときに「もしもしどうかしましたか?」と、見ず知らずの人(こいつの方がよっぽど不審者だ)に話しかけられることの怖さを。さらに、相手が自分たちを誘拐犯とその被害者と疑っていると知れば、怒りも湧いてくる。いくら謝られても、害した気分は元通りにならないだろう。


たしかに、幼い娘をもつ親たちがどれだけ恐ろしい思いで今回の事件の行く末を見守っていたかは、子どものいないぼくでも想像に難くない。そうした視聴者の心理的土壌があるだけに、くらたまのこうしたむちゃくちゃな発言は一定の支持は得られるかもしれない。
けれど、それは心情の問題に過ぎない。事実ベースでいくと、あまりクレバーな物言いとは言えない。


男性を危険視するこのような物言いを見かけるたび、現代の男性(とくに非モテといわれ、恋愛市場から排除されるタイプのイケてない男性が多いのだが)の窮状がよくわかる。男に生まれたくて男に生まれたわけではない。にもかかわらず、成長し、体が男性的な変化を遂げていくにつれ、本人の自己認識は度外視で男として視認され、場合によっては「犯罪者予備軍」扱いまでされてしまうこの不遇。


ぼくはこうした窮状を眺めるたびに、大槻ケンヂの「踊る赤ちゃん人間」を思い浮かべる。

人は裸で 生まれた時は 誰も愛され 同じなはずが
どうしてなのだ 生きていくうち 運命(さだめ)は別れ むごいくらいだ
  

人の目見たり 見れなかったり 恋を知ったり 知れなかったり
それなら僕は いっそなりたい 死ぬまでベイビー 赤ちゃん人間


ちゃんは赤ちゃんでいることそれ自体で、「罪のない愛くるしい存在」ということになっているが、成長するにつれてそんな赤ちゃんたちの運命もわかれていく――そうした悲哀を歌った歌詞だ。
実の娘と一緒にいるだけで犯罪者扱いされる、そんな世の中が来るとするならば、そのときこそ、こう言いたい人がきっと出てくるはずだ。死ぬまで赤ちゃんでいたかった、と。