いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

記事が釣りかどうかという歪なノリ

はてなの匿名掲示板、通称・増田での以下の記事について、賛否が分かれている。
強姦されて分かったことを書く

「大した金も持ち歩いてないし飲んで酔って外で寝ていたら強姦された」という投稿主は、その経験から「分かったこと」3つを記し、4つ目として自身が「毛深い100キロオーバーの40代男性」であると明かす。

この記事について、釣り(=注目を集めるために記されたフィクションの投稿)ではないかという疑いの声があがっている。
たしかに疑う余地はあるように思える。一般的に強姦被害は女性の方が遭いやすく、そうした点から投稿者の性別が男性ならば特異であり、最後になって明かすのは不自然なようにもみえる。そこから、この投稿そのものがフィクションでないかという気がしてこなくもない。
しかし一方で、事実ではないという可能性がゼロではなく、もし本当だとしたら「ネタ乙」などと片付けるのはおかしい、という反論の声もあがっている。もし事実だとしたら、そうした疑惑の声や批判は「セカンドレイプ」となってしまう。


ぼくは、どちらかというと後者の意見に近い。
以前こうした文章を書いた。

釣られた人は、釣られなかった人の受け取れなかった意味を受け取っている - 倒錯委員長の活動日誌

有意味な文章であったとしても、ネット上では一旦それがテンプレや釣り記事であると判明すると、その価値が不当なほど低く見積もられる傾向があることについて書いた。


この記事で書いた傾向は、いまも変わらないしむしろ強くなっているような気さえもする。「釣り師」シーンはより先鋭化し、それ専門とさえいえるブロガーも登場している。釣りか否かの判定が、もはやコンテンツ化しているといえる。
けれど、こうした「読み方」というのは、一般的な「文章の読み方」からすれば、ずいぶん歪だ。
上の匿名投稿の内容が実際に起きていようがいなかろうが、そこから学べる知見が全くないわけではない。
とりあえず、「毛深い100キロオーバーの40代男性」であろうと、「大した金も持ち歩いてな」かろうと、「飲んで酔って外で寝ていたら強姦され」る恐れがある、ということ。いや、確率からすると、例えば二度と増田に投稿できなくなるようなもっと酷い目にあっていてもおかしくなかったかもしれない。そうしたことは、知らないよりは知っている方がマシである。


釣りかどうかというのは本来些末な問題で、強いて言うならばそうしたフィクションにより実害があるかどうか、である。この文章でいうと3つ目の「警察も親身になってくれるとは限らない」がそれに引っかかりそうだ。実は強姦被害者にとって警察はもっと頼りがいのある存在かもしれないが、断定はできない。


いや、それだけをいうと片手落ちかもしれない。
所詮は匿名投稿なのである。その文章が釣りである(フィクション)か、釣りでない(事実)か、あるいはフィクションを交えた事実なのかなんて読み手は知りようがない。事実なのはそうした投稿があった、ただそれだけだ。
冒頭の文章に対して使うのはまことに皮肉な話なのだが、最終的には「疑わしきは罰せず(釣り認定せず)」の精神に落ち着くのではないかと思う。