【映画評】ウォーム・ボディーズ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/02/07
- メディア: Blu-ray
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人類の大半がゾンビになってしまった世界で、残された人類の1人ジュリーと、青年ゾンビRの交流を描くラブコメ。
ゾンビ映画を大量に生産し続けるアメリカ人のゾンビへの愛情には感服するところだが、ついに彼らはゾンビの恋愛を描く境地にまで達してしまった。本作は、ゾンビと人間の恋愛を描く怪作だ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』もクライマックスで「ゾンビとの友情」を描いたが、本作は全編を尽くして、ガチに恋を描く。
冒頭、状況を説明するゾンビRくんによる明朗なナレーションがシュールで、早くも期待させられる。レコードを聴きながら外の世界に憧れるゾンビ、バーカウンターで親友(ゾンビ)と会話を交わすゾンビ、打ちのめされるような一目惚れをするゾンビ、女性が着替えるところに遭遇してドギマギするゾンビなど、鑑賞者はおそらく本作鑑賞で多くの「ゾンビ初」を目撃するはずである。「外は危ないよ?」「死にたいぐらいだ、死んでるけど」などのゾンビジョークも、所々で炸裂する。
ゾンビであることを臆する内気な青年に、ニコラス・ホルトを充てたキャスティングが見事。X-MENにも通じるが、異形の者であることに引け目を感じる姿が、彼はすごく似合う。
なんというか、彼が間違いなく生前もイケてなかったということが、透けてみえるかのよう。そうした彼の性格は、ゾンビという存在そのものがイケてないキャラクターと、リンクする。そう、この映画のゾンビは、「イケてないヤツ」のメタファーなのかもしれない。そう考えると、ジュリーとの恋路は極めて王道なラブコメに見えてくる。
本作で彼は、ただのゾンビだけでなく、「人間のふりを一生懸命するゾンビ」というかなり込み入った演技にも挑戦する。
結局、ゾンビと人間の違いをイケてるかイケてないかという身分の違いに矮小化し、その反面、両者の同盟する背景には絶対悪のガイコツがいるという構図は、まんま現実の政治にありそうだけれど。
個人的にはあまり刺さらなかったが、ユニークな一品がゾンビ映画史に足跡を残したことは、変わりない。