いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【書評】下流社会 第3章――オヤジ系女子の時代/三浦展

下流社会 第3章 (光文社新書)

下流社会 第3章 (光文社新書)

マーケティングの専門家である著者によると、現代の女性の趣味は多様化しているらしい。従来のようにファッションにお金をかけないこともないが、それ以上に自分の趣味について出し惜しみなく消費する、という女子が増えたというのだ。本書はそんな、やっていることが男性的でおやじ的な「オヤジ系女子」の生態を、文化系、アウトドア系、OL系、手作り系、オタク系の5つのクラスタにわけ、考察していく。話はいちおう2010年、2011年に実施された1000〜2000人規模のアンケート調査と、当の「オヤジ系女子」へのインタビューをもとにした分析で成り立っている。

本全体が醸し出すのは、圧倒的な「今さら感」である。かつてマーケッターは消費社会の最先端をいく仕事である、はずだった。どこがどう今さらなのかという局所的な問題ではない。こうした分析手法、分析の結論、背景にある価値観がもはや時代の先を行っていない。まさかマーケッターが時代に遅れる時代が来ようとは。そして「かまやつ女子」に続き、圧倒的な悪意が感じられる「オヤジ系女子」というネーミングである。あまりのセンスのなさに、逆にセンスを感じるのはぼくだけだろうか。

クラスタの趣味や趣向、価値観を事細かに分析しているのであるが、疑問に思ったのは、「昔からこういう女性はいたんじゃないのか?」ということだ。本書では通時的な分析は一切なされない。「昔はこうでなかった」という著者の印象論一点において、「オヤジ系女子」は"現代特有の現象"に仕立て上げられる。ほぼ同じ「オヤジギャル」という言葉が90年に流行語になったことを、当時マーケティング雑誌の編集長を務めていた著者が知らないわけないだろう。

さすがに本のデキにやましさを覚えたのか、あとがきで著者は「まあ、これは新書ですから」とエクスキューズするが、この本と同列に語られるのは他の著者に失礼である。