いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

「居酒屋甲子園」は何かの”サイン”ではないか?

14日のNHKクローズアップ現代」で紹介された「居酒屋甲子園」が、ネット上で物議を醸している。
ぼくは、今回この特集でその存在を知った。

居酒屋甲子園」とは、“居酒屋から日本を元気にしたい”という想いを持つ全国の同志により開催された、外食業界に働く人が最高に輝ける場を提供する大会です。
全国からエントリーされた居酒屋のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀店舗が、年一回、数千人が集う大会場に集結します。ステージで自店の想いや取組みを発表し、 居酒屋甲子園における日本一の店舗を決定、外食業界で働いている人が夢や誇りを持てる大会にすることを目指しています。

居酒屋甲子園とは

何を競う大会なのかわかりにくい説明文だが、「ステージで自店の想いや取組みを発表し、 居酒屋甲子園における日本一の店舗を決定」する大会なのだそうだ。
これでもまだ、どんなものなのか想像しがたいのだが、以下の動画が実際の大会の模様である。心してみてもらいたい。

壇上のプレゼンは、おそらくスタッフ総出で行われる。店舗での具体的な接客サービスの説明もあるが、その大部分は店員らと店との関係や、店で働く前の自分がどうで、働き始めたことでいかに変わることができたか、店員同士の絆などを、絶叫で説明することに割かれる。なかには、途中でぽろぽろと泣き出す店員もいる。
茂木さんの動画のときにも感じたが、素人によるこうした出し物は、プロの完成されたものよりも荒削りでかえって破壊力がある。
これが居酒屋甲子園なのだそうだ。

最初にもったのは、これを「居酒屋甲子園」と呼ぶことへの違和感である。
自分の思いを語ることが居酒屋店員の仕事なのではない。客の注文を聞き、調理し、配膳する。つまりもてなすことが、居酒屋のみならず外食産業の本義であって、彼らがなんらかの主義主張を持つことは自由だが、それを「居酒屋甲子園」の名において大会にし、一位を争うというのは、どこかしっくりこない。


Twitterでは、ぼくのようにクロ現を通してこの大会を知ったと思われる視聴者による、否定的な投稿が多数見つかった。特に彼らの特殊な連帯感に「宗教」との類似点を見いだす批判も、複数あった。このネットでの騒動を受け、大会運営サイドが番組への不快感を表明するコメントを発表をしている。

年に1回、パシフィコ横浜に隔離されて行っているのだから、そんな目くじらを立てるのは可哀想ではないか、とも思う。
けれど、この動画を見て少なくともぼくは、彼らの居酒屋で働きたいとは思わなかった。むしろ、いまの外食産業がどれだけ過酷なのかを、彼らの不自然なほどの満面の笑みは物語っているように感じた。あれは、本人たちも気づいていない何かの「サイン」なのではないか?

もう一度、大会の説明文を読んでもらいたい。

居酒屋甲子園」とは、“居酒屋から日本を元気にしたい”という想いを持つ全国の同志により開催された、外食業界に働く人が最高に輝ける場を提供する大会です。
全国からエントリーされた居酒屋のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀店舗が、年一回、数千人が集う大会場に集結します。ステージで自店の想いや取組みを発表し、 居酒屋甲子園における日本一の店舗を決定、外食業界で働いている人が夢や誇りを持てる大会にすることを目指しています。
強調引用者

この説明文は、現在の外食産業が、従業員がいかに輝けず、いかに夢や誇りをもてない労働環境なのか、ということの裏返しではないだろうか。

外食産業で、労働力が安く買い叩かれているという現状は、すでに多くの人が指摘しているところである。
この先でもし、そうした現状が是正されて外食産業の労働環境に後ろ暗い側面がなくなったならーーそのとき、居酒屋甲子園はその役目を終えるのかもしれない。