いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【書評】格付けしあう女たち/白河桃子

内容(「BOOK」データベースより)
「八千円のランチに行けるか、行けないか」で「ママカースト」が決まる!?女性の間に生まれる「カースト」の苦しみは、社会的な成功だけでなく「女としての幸せ」というダブルスタンダードで計られることにある。「恋愛・婚活カースト」や「女子大生カースト」、「オフィスカースト」などの「女子カースト」の実態と対処法を探ると共に、そこから見える旧態依然とした会社組織や貧困、シングルマザーなどの日本の課題点に迫る。

『「婚活」時代』で婚活ブームと婚活本ブームを起こした白河桃子の新著。女子が女子同士を格付けする「女子カースト」の実態を、インタビューをもとにして解き明かしていくという試み。

はっきりいって前半はぬるい。カーストの本場インド人もびっくりのぬるさである。8000円のランチが高くて行けないのなら、行けないとはっきりいえばいいのである。そんな胸くそ悪い優越感ゲームは、最初から参加しなければいい。女子大生カーストにしろ、そんなヒマあったら勉強しろ、という話だ。

著者の分析によると、女子カーストができるのは、ヒマで、狭くてぬるい均質な逃れられない(あと、カーストを作りたがる「悪の種」女子がいる)集団なんだそうだ。女子大生の集団なんて、まさに前2つにもろ当てはまる。右も左も鏡の中の自分のような格好の集団が、ガストなどで延々と時間をつぶすのである。だからこそ、彼氏がいるかどうかや服はどこのブランドだなどと、みみっちい差異化ゲームに興じるのである。忙しい人間はそんなのに参加するヒマないだろう。


一方、後半は女性の労働問題に切り込む。日本の労働の現場で、女性が依然、結婚するかどうか、そして子どもを産むかどうかによって断絶されているということが論ぜられる。
ぼくからすれば、前半よりこちらの方がよっぽど喫緊の課題のように思える。なぜなら、職場こそが様々な境遇(独身/既婚、子持ち/子なしets)の人々が一つの目的にむかって協調していくことを強いられる場だからだ。いざとなったら抜け出せる友人知人の関係とは、わけがちがう。
本書では、産後に時短で働くワーキングマザーと出産していない女性との断絶(女の敵は女!)の問題や、職場でもなお女性が結婚や子供というアイテムでジャッジされるダブスタに苦しむ問題に焦点が当てられる。


こうした現場でこそ、女性同士の協調が必要になってくるのだが、なかなかそうはならない。それはなぜなのだろう。
これについて、取材を通しての「女は自分の生き方を否定できない」(p.216)という著者の実感は至言だ。そしてそれは、「女は他の女の生き方を肯定できない」ということと表裏一体となっているんじゃないかと思う。


前述したように前半の内容はぬるく、「本来は問題でないものを問題化している」といった印象は拭えない。また、インタビュー主体の構成は、AERAの特集のような俗っぽさを醸し出す。けれど、読むに耐えないほどではなく、近頃ブームの「カースト」論に興味がある人は手に取ってみてもよいのでは。