いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】「ファイナル・デスティネーション」シリーズ

ファイナル・デスティネーション」シリーズ5作を見終えた。だいたいどういう映画なのかというのは聞いていたが、改めて見てみるとやはり面白いし画期的なシリーズだったと思う。

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このシリーズの何よりの特徴は、せまりくる脅威がジェイソンのような化け物でも、ジョーズのようなモンスターでもなく、目に見えない「運命」であるということ。もちろん、今までのホラー映画でも事故死というのは描かれてきただろうが、このシリーズほど「事故死だけ」を全面的に推したものはなかった(もっとも5作目にしてその約束が部分的に破られているが)。
他の人たちとともに死ぬはずだった大惨事を、奇妙な予知で察知し生き延びた主人公らが、「死ぬはずだった運命」によって次々と事故死という名の凶行で殺されていく。5作とも、この全体構造だけは絶対に壊さない。
殺される順は死ぬはずだった順なのだが、さあここで問題。このシリーズは「次に誰が殺されるのか?」というのが予め観客にバレているのだ(主人公の予知シーンで予め観客に提示されるから)。
ホラー映画の醍醐味の一つが潰された状態で、何を楽しめばいいのかというと、「どのように死ぬか?」なのである。要はWHO? ではなく、HOW?なのだ。このシリーズ第二の特徴は、そのユニークな事故死パターンだろう。ホラー版ピタゴラスイッチだとか、人を殺す物ボケだとかいろいろ言われているが、それらの多くがいわゆる「エクストリーム事故死」である。製作陣も味を占め、観客にいかにも事故が起きそうなトラップをみせておきながら、結果的には全然それと関係ない死に方だった……みたいな展開がいくつかあり、それらはあきらかに遊んでいる。大ネタをトラップにしておいて、後から出てきた本命がめちゃくちゃショボくて唖然……というのもご愛嬌。


最新作5はこれらのお約束を踏襲しながら進行するが、クライマックス前にきてこれまでのシリーズ4作で続けてきた「事故死」という大事なお約束を破ることになる。そして映画には、1から観ている者にはちょっとした驚きの、そしておそらくこの5がシリーズ最終作なのだろうと「予知」させる華麗な「終着駅」(デスティネーション)が用意されている。ホラー映画の最後で感慨深い思いをさせられるのは、このシリーズならではだろう。

ところで、このシリーズを見ていて思ったのだが、どうせ人間はいつか「死ぬ運命」なのである。どんな人間も100%死ぬ。この映画の登場人物らも、別に不死という設定はない。なのに、なぜ彼らはやがては肩を叩いてくるその「運命」から逃げているのだろうと思うと、滑稽にも思えてくる。
けれどこれはぼくらにだっていえるのだ。永遠に生きるなんてしんどいし嫌だ。けど今すぐ死ぬのも嫌。結局はぼくらは「死ぬ運命」に追いつかれたいわけじゃなく、かといって「死ぬ運命」から完全に逃げ切りたい(不死)わけでもない。
じゃあどうして欲しいかというと、基本的には遠目からついてきてほしいけど、いつかは肩を叩いてくれ、そしてそのいつかというのはこちらから指図(自殺)はしないから、こっちの様子をみてちょうどいい頃合いで、というところだろう。

うわっ!めんどくせーやつ!