いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座、直毛によるブログ。今ここに、ポスト宮根誠司を目指すことを誓います。

【映画評】借りぐらしのアリエッティ ★★★★☆

進撃の巨人』が大ヒットしてるみたいですが、話数が進んじゃって今から追いかけるのは大変なので、こちらで済ましてしまいました。

借りぐらしのアリエッティ [DVD]

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いわずとしれたスタジオジブリの映画です。いまさらながら観ました。
もうね、説明するまでもないですが、のっけから描写が凄い。思わず身を乗り出して見惚れてしまうような、緑豊かな自然が細部まできめ細か書き込まれている。
ぼくは大の虫嫌いなので、美しい画面であるのを認識しながらも、同時に「こんな自然の中だから、ぜったい虫がいるだろう」と先回りして嫌な気分になりましたもん。それぐらいリアル。で、実際このあと劇中に登場する虫たちには悲鳴をあげてしまったわけですが。


背景への力の入れようは、もちろん家の中にも行き届いている。とくにこの作品では人間である翔の側から見る世界と、アリエッティたち小人の側から見る世界で書き分けがされていて、後述しますがそれがキーになってくるわけです。翔のいる世界でのとりとめもない出来事が、アリエッティのいる世界からしたらとんでもなく壮大で、乱暴な事態なのかがよくわかる。でもそれは、わかりやすいイベント(例えば洗面台で流されてた〜すけてえええええええとか)ではなく、家具などの静物のちょっとした描き分けによって示されている。ここらへんの技術力には舌をまきます。
この「翔の住まう世界」と「アリエッティの住まう世界」の違いがこの映画の一つの大きなテーマを指し示している。それは、ジブリではおなじみではありますが、「他なる者との共生は可能か?」というテーマです。


さて、ストーリーはとてもわかりやすいですが、ただ一点だけ、のど元に引っかかった骨のように飲み込みがたい箇所があります。それは翔の不可解な言動です。
突然アリエッティの住居(これがまたヨーロッパ調で、いかにも女性が好きそうなデザインなんですが)を上から開けて勝手に「リフォーム」してしまう場面。そしてもう一つは、ネットでは既に多くの人が論じていますが、「君たちは滅び行く種族なんだよ」とアリエッティ本人に面と向かって特に悪気もなく言い放つ場面ですね。

この二つの言動がわかりやすいストーリーのはずのこの映画に、微妙なひずみを生み出している。これらをよしとしない向きもあるかもしれませんが、ぼくは結果的にあの二つがあってよかったんじゃないかと思います。むしろ、あの二つがなかったらもっと平凡な作品になっていた。

というのも、「他なる者」というのは、必ずしも「自分にとって都合のいいヤツ」とは限らないからです。ときにヤツは、ありがた迷惑なリフォームを押し付けてくるかもしれない。ときにヤツは、無神経な発言をしてこちらの気分を害するかもしれない。そういう意味で、アリエッティにとって翔という「他なる者」の理解のしがたさは、「他なる者との共生」の難しさでもある。


紆余曲折を経て、最後に二人はわかりあいながらも別々の道を歩みはじめます。
おそらく『進撃の巨人』も、巨人と人間がわかり合ってキャッキャウフフをする作品なんだと思います。見てないですが、たぶんそうなんでしょう。ええ。
ナウシカ』『トトロ』といった後世に残る大名作とはいえないですが、手堅い仕事だと思いました。