いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

お前ら、宇宙人に話しかけることは決まってんのか?(改訂版)


※改訂版です。中盤の以降の説明が自分でもしっくりきていなくて、「そして、その最たる例が「男の常識」と「女の常識」の分裂だ」から「一石二鳥ではないか。」までを書き換えました。あとはすべて前と一緒です。



日本では深夜の時間帯にあったNASAの記者会見で、テレビもネットも朝から話題はもちきりだ。なんでも、宇宙生物学の常識ではこれまでありえないとされてきた、ヒ素を食べるバクテリアが発見されたという。


http://mainichi.jp/select/today/news/20101203k0000m040112000c.html


・・・といってもそれは、H・G・ウェルズ版火星人のような宇宙人を勝手に想像していた一般人の期待を満足させるものとは、到底言えなかったことは否めない。



一方で、今回の一件は実際に発見されたものとはまた別の意味で、あることが再確認できて興味深かった。
やっぱりみんな、宇宙人にめちゃめちゃ興味があるのだ。
宗教的な理由も含め宇宙人に会いたくない人ももちろんいるがあくまで少数派で、多くの人は宇宙人に出会えるなら出会いたいと思っているようだ。


しかし、その期待が過剰になればなるほど、同時に危険でもある。どうもこの人類の宇宙人への熱狂は、彼らと会うことそれ自体を目的にしてしまっているふしがあるのだ。



それはそうとお前ら、宇宙人に会って話しかけることとかちゃんと決めてるの?



多くの人が、おそらくこの問いを前に口ごもってしまうのではないか。みんな、宇宙人との出会いへの期待が過剰すぎて、ほとんどだれも、「会って何を話すか」なんて考えちゃいない。だが会ったらそこで終わるわけではない。いや、むしろ人類と宇宙人とのコミュニケーションはそこから始まるのだ。



このままでは非常にまずいと僕は思う。



というのもこのままでは、話すネタもないのにたまたま見かけた有名人に話しかけてくる、あの“痛いファン”の図とまったく同じではないか。
ファンからすれば、テレビで慣れ親しんだ“あの有名人”と出会えたことに興奮しているかもしれないが、芸能人からすれば面識のない他人から突然声をかけられるのだから、鬱陶しいにちがいない。おまけにファンの側にはこれといって「話すネタ」はない。実のところは(大して好きでもないのに)有名人だからと脊髄反射的に声をかけてしまっただけなのだから。
これはかなり失礼な話だ。


自分はそんな無粋なことなんかしない、と思われるかもしれない。だがこのままではあなたを含む人類全員で、宇宙人に対して同じような非礼をしでかしてしまうのではないかと、僕は怖れているのだ。


有名人に「こいつ痛いな」と見下されるだけならまだいい。だがもし、人類サイドの仕掛けてくるあまりに無内容な会話によって、宇宙人に失望されてしまったらどうするのだ。バカにされて終わりならまだましだ。場合によってはアホと見限られ「こいつら滅ぼしてもよくね?」と考えられるかもしれない。これは由々しき事態だ。



ここは、相手にとっても有益でありかつ、人類にとっても有益である質問を投げかけるべきだろう。


幸いにも、僕が前からひとつ考えている。NASAでも種子島宇宙センターでもどこでもいいから、ぜひとも参考にしてほしい。

僕が人類代表ならば、こういうことを聞いてみたい。



「男と女、どっちが正しいと思いますか?」



世界には「正しいこと」がひとつと決まっているわけではない。状況と場所によって「正しいこと」は変わるのだ。


そして、その最たる例が「男の常識」と「女の常識」の分裂だ。
世の中には、「男の常識」というやつと、「女の常識」というやつがある。


いや、あるというよりも正確には、あるだろうという推測しかできない。日常的に、僕らは常々言っているではないか、「なんで女はこうなんだ!」、そして女も「なんで男はこうなのよ!」と。


考えてみればこれは、全ての異性を一緒くたに論じているのだから、ものすごくアバウトで暴論なのだ。
けれど、世の中の多くの「なんで男/女はこうなんだ/のよ!」が、同性からの支持を得る確率は高い。


異性が「こうな」っているのが、おかしいと思うからこそ、こういった心からの叫びが生まれるのだ。ということはである。逆に言えば「こうではない」ことが、同性間での「常識」として登録されているということがいえるはずである。そこにはきっとあるはずなのだ、明確には定義できないけれど、同性間に限定して共感を得られるはずのなにかが。

これが僕がここでいう「男の常識」と「女の常識」だ。





だが、ふと思う。


では、今僕の目の前で、僕のとった行動に対して怒りをたぎらせ、「なんで男はこうなのよ!」と罵倒する女の子がいたとする。


その子に向かって僕はこう言いたい。


「じゃあお前、俺になってみるか?」


男になって、僕が「こう」なっていることを実際に体験みるか?と。


「なんで男はこうなのよ!」というとき、女は当然、男を批判している。
しかしここには重大な文言が抜け落ちている。
ただしくは、女は女の立場から男を批判しているのだ。
では、もし男になってみたら、「彼女」だって「あ、男が「こうなる」のもわかるかも」と思うかもしれないではないか。


それができない以上、女が女として男が「こうな」っているのを批判するのは、ポジショントークにすぎない。一方、男も「なんで女はこうなんだ!」というときに、女が「こうな」っていることに対してを“中立的”な見地から批判することはできない。なぜなら、男の批判も所詮、男の立場からの批判にすぎないからだ。


男の性質がどうとか女の性質がどうとか、ではない。この問題が解決困難なのは、どうあがいたって「ポジショントークしかできない問題」だからだ。「男」にも「女」にも与しない、価値中立的なポジションなんてない。


かつて精神分析家で哲学者のジャック・ラカンは、昼と夜に例えてこれを説明した。
昼と夜は、両者別個に、単独に存在しているのではない。昼は相反する夜がなければ存在しえないし、反対に夜は相反する昼がなければ存在しえない。
そのことは男/女にも当てはまる。男は女という「他者」がいなければ男になれないし、女は男という「他者」がいなければ女になれない。


つまり、もともと男と女があってそこに線引きが生まれたわけではない。線引きによって初めて、男と女の差異が生まれたのだ。そして、その構造の中で生まれたすべての人類が男陣営、女陣営、どちらかの陣営からのポジショントークしかできないというのは、構造的な必然でもある。


かつては、男が自分たちの「常識」だけを一方的に言い張った時代もあった。それを批判したのがフェミニズムという運動であったと評価できる。しかし、だからといって女の「常識」が正しいとは証明できないわけで、やはり「男の常識」と「女の常識」というのが別個に存在している。どちらがより正しいか、中立的見地から比べられることないまま。



だから僕は、地球にやってきたばかりの女でも男でもない宇宙人に、女に対しても男に対してもまだ価値中立的な宇宙人に問いたいのだ。
「男と女、どっちが正しいと思いますか?」、と。


もちろん、この質問をされることには宇宙人にとっても利点がある。
ジャッジをする前に男陣営、女陣営の生態をよく知らなければならない。人類について理解を深めてもらうという意味では、一石二鳥ではないか。



他にもいろいろな「ポジショントークしかできない問題」は存在する。この際それらについても判定してもらおうではないか。


例えば国際問題。
現在日本は近隣諸国との間で領有権を含む複数のもめ事を抱えているが、これらの解決を困難にしているのは、ひとえにそれらが「ポジショントークしかできない問題」だからだ。
事案によれば、どう考えてもこれはうちでしょ?という問題もある。しかしそれは、日本人の僕が言っても何ら説得力をもたない。だから、日本にも相手国にも中立的な存在に判定してもらわなければならない。


だが、大昔ならともかく、各国がどの国ともなんらかの利害関係で少なからずつながっているグローバリゼーションの現代においては、価値中立的な発言のできる国なんてありえない。もちろん、争っている相手の国際的なプレゼンスを強めてきているということも要因ではあるが、一番の理由は、このことについてまったく中立的に説得力のある意見を述べることができるという存在が、少なくともこの地球上にはいないということなのだ。


国連が中立的な機関となりうるはずだが、皮肉なこと国連のなかでも、価値中立的な議論というよりは各国の国連大使によって多数決に勝つための熾烈な動員ゲームが繰り広げられている有様で、あそこで問題の解決をはかるのは難しい。


僕は別にナショナリストではないけど、とにかくこの事態のもやもやした感じは、すこし気持ちが悪い。だから、地球にお越しになった宇宙人に判定してもらえばいいのだ。これまでの歴史的経緯、両者の言い分、すべて踏まえたうえで、「どっちが正しいっすかね?」と判断をゆだねればいい。


それで日本が敗れても、なんか諦めがつくではないか。



ということで、僕は男と女の正しいことについて聞いてみたいのだ。
もちろん、部分部分で女が正しかったり、男が正しかったりするのだろう。「決めらんないよー」と口をとがらせられてしまうかもしれない。
僕はそれでもいいと思う。


え、もし出会った宇宙人の股間から巨大な突起物が出ていたら?
そりゃたぶん角でしょ。