いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】戦争映画なのに主人公は壁に張り付いてしゃべりっぱなし「ザ・ウォール」

 

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ときはイラク戦争の末期、アメリカ軍のスナイパーのアイザックは、応援要請を受けて砂漠地帯にある石油パイプライン建設現場に同僚のマシューズと駆け付けた。

ところが、現場には複数の不自然な状態の死体が転がるのみ。

そのとき、風を切る音とともにマシューズはその場に倒れ、助けるために近寄ったアイザック自身も何者かに狙撃され膝を撃たれる。

辛くも避難したアイザックだが、相手はなおもどこかに息を潜め、彼を狙っている。

どうやら相手は凄腕のよう。

 

本作、その名も「ザ・ウォール」は、上映時間約90分のうち、主人公がほとんどのシーンで壁に張り付いているという世にも珍しい映画だ。

それだけではない。

戦争映画にありがちな激しい銃撃戦などはなく、ほとんどがダイアローグで進行する。

手負いのアイザックの命をかろうじて保証するのは、相手の死角となる崩れかけた古いれんがの壁一枚のみ

そこからひょっこり頭でも出そうものなら即自分の脳漿が飛び出すのが見られるような極限の状況で、アイザック自身を狙うスナイパーと、無線を通して会話劇を繰り広げる。

 

脚本を手がけたドレイン・ウォーレル氏は「公園のベンチでチェスをする2人の男性の会話にも似たところがある」と評したというが、まさに二人のやりとりは、片方にほぼ勝ち目のない将棋のハンデ戦のよう。

アイザックはさまざまな方法で相手の裏を描こうとするも、「一方的に見る側」「一方的に見られる側」という図式が作り出す敵の絶対的な優位性はなかなか揺るがない。

 

「見る側」「見られる側」といえば、西洋人が大好きな神と人間の関係だ。わかりやすいといえばわかりやすいが、アイザックが感極まって過去の罪を「告白」までするのはすぎだし、取ってつけた感がする。

ただ、その点を除けばスナイパー好きにはたまらない映画だ。ブラックなオチもいい。